高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症(痛風)
痛風とは、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が激しく腫れ上がり、鋭い痛みを引き起こす病気です。
この痛みは「風が当たるだけでも痛い」と表現されるほど激烈で、発作的に現れることから「痛風発作」と呼ばれます。
発作は通常、24時間以内に腫れ・赤み・熱感がピークに達し、2~3日間強い痛みが続いた後、1週間から10日ほどで徐々に軽快していきます。
最もよく発症するのは足の親指の付け根ですが、足首、膝、足の甲、アキレス腱の付け根、手首や肘など、他の関節にも起こることがあります。通常、発作は一つの関節に起こるのが特徴で、複数の関節に同時に現れることは稀です。
現代医療では、痛風の原因となる高尿酸血症に対する治療法や予防策が確立されており、適切な管理によって通常の生活を送ることが可能です。
しかし、放置すると関節の激痛が繰り返し起こり、状態が悪化するだけでなく、体の至るところに結節(肉芽腫)ができたり、腎臓機能にも影響を及ぼしたりすることがあるため注意が必要です。
痛風の原因は、血中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」にあります。尿酸はプリン体という成分が分解されてできる老廃物の一種で、通常は尿として体外に排出されます。しかし、尿酸の産生が過剰になったり、腎臓からの排泄がうまくいかなかったりすると、血中の尿酸が増えすぎて高尿酸血症の病態になります。
血中尿酸値が7.0mg/dLを超える状態が続くと、尿酸が結晶化し、関節などに沈着していきます。何らかの刺激や尿酸値の急変が引き金となり、沈着した尿酸塩結晶が関節液中に溶け出すと、それを異物と認識した白血球が反応し、強い炎症を引き起こします。これが痛風発作の正体です。
尿酸値が高くなる背景には、遺伝的体質や腎機能の低下、過度の飲酒、肥満、激しい運動、ストレス、または一部の降圧薬の影響などがあります。とくに糖尿病の方は腎機能が低下している場合が多く、尿酸の排泄能力が落ちていることから、痛風を合併しやすい傾向にあります。
痛風は突然の激しい関節痛で始まります。
典型的な症状は、特定の関節が突然赤く腫れ上がり、熱を持ち、触れることもできないほどの激痛を伴うことです。初回発作では足の親指のつけ根が最もよくみられますが、足首、膝、手首、肘などの関節にも生じることがあります。
発作は通常、夜間や早朝に起こりやすく、起床時に突然の痛みで歩けなくなることもあります。発作は数日で治まることが多いですが、何度も繰り返すようになると、次第に間隔が短くなり、複数の関節に及んだり、結節(痛風結節)ができたりすることもあります。
以下のような症状や体調の変化がある場合は、痛風や高尿酸血症の可能性を疑う必要があります。
痛風は突然発症するケースが多く、見逃されがちな初期サインを見極めることが予防の第一歩となります。
特に糖尿病や高血圧などの生活習慣病をお持ちの方は、これらの症状に早めに気づくことが、合併症の予防につながります。
これらの症状や背景がある方は、症状が出ていない時でも、早めに医療機関を受診しましょう。
痛風は、臨床症状と血液検査を組み合わせて診断します。血液検査では尿酸値が7.0mg/dL以上で高尿酸血症とされ、発作時には炎症反応(CRPの上昇、白血球増多)も認められます。
痛風は男性に多く、患者さんの95%は男性です。女性では女性ホルモンが尿酸の排泄を助ける働きがあるため発症しにくいとされますが、更年期以降では注意が必要です。
痛風の治療は「発作の治療」と「高尿酸血症の管理」に分かれます。
発作が起きた場合は、炎症と痛みを抑える治療を優先します。
※発作中に尿酸を下げる治療を始めると、かえって症状が悪化するため、尿酸値のコントロールは発作が治まってから始めます。
発作が治まった後は、再発予防と合併症予防のために尿酸値をコントロールします。
治療は医師の指導のもと、定期的な血液検査で効果を確認しながら継続します。
痛風は「突然の激痛」で発覚する病気ですが、根底にある高尿酸血症は無症状で長年にわたって進行していることが多いものです。糖尿病との合併で動脈硬化リスクが一段と高まるため、日頃から尿酸値にも注意を払うことが重要です。
最新の研究では腎機能低下を防ぐには尿酸値は5.0mg/dL未満が推奨されるデータもあり、尿酸値が一見正常範囲内の方でも、腎機能低下がすでにある方には積極的な治療を勧めることもあります。
痛風は放っておくと発作が繰り返されるだけでなく、腎障害や尿路結石、さらには心血管・脳血管の重大な病気へとつながるリスクもあります。
「まだ痛みはないから大丈夫」と思わず、健康診断で尿酸値が高かった方、生活習慣に心当たりがある方は、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。早期の対応が、未来の健康を守る第一歩です。